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【書評】成功者の告白

 

成功者の告白 (講談社+α文庫)

成功者の告白 (講談社+α文庫)

 

 

以前読んだ不格好経営に続き、物語調で書かれる本書には読者を引き付ける力があると私は思います。

従って、私は本書のタイトルにある通り、5年間の企業ノウハウを約3時間程度でインプットすることができました。

私の心に響いた学びは2つあります。

1つ目はベンチャー企業がどのような努力をすれば成長カーブの曲線通りに成長できるのかというプラスの面です。

2つ目は経営者として会社を経営するうえで直面する様々な困難とそれを乗り越えるために必要な犠牲とは何かというマイナスの面です。

 

まずプラスの面ですが、本書は2004年に刊行され、現在までに14年の年月が経っています。

変化の激しい時代では現代の経営に過去の経営ノウハウは果たして役に立つのかと思う方も多いかもしれません。

しかしながら、本書には現代の経営に活かせる点が多くあると私は思います。

私が感じ取った著者が大事にしていた点は会社のそれぞれの成長段階には「起業家」「実務家」「管理者」「まとめ役」が存在し、4人のそれぞれ担う役割を持つ人間がどのように働くべきか?という点です。

これら4者は会社の成長段階で求められる役割が変化します。

それぞれがこの変化に適応することも必要ですし、経営者が自分も含め、それぞれの人間をしっかりと先導していく必要もあるのだと思いました。

それを踏まえた上で、私たち経営コンサルタントは本書で説明される典型的な会社の成長段階を知識として頭に入れておくべきだと思いました。

その理由はお客様である会社の社長に価値を与えるために役立つからです。

 

次はマイナスの面についてです。

我々の目指す経営コンサルタントとして、経営者の苦悩を理解することはとても重要な意味を持ちます。

それを踏まえた上で、経営者の苦悩を疑似体験できたことは非常に貴重であったと私は思います。

特に仕事と家庭のバランスを保つことの難しさや強い信頼関係を持ち、良い友人でもあった部下を解雇することなど経営者ならではの苦悩がいかにも現実的に描かれていて、私には学ぶべき点が多くありました。

これらを踏まえ、私は著者が本書で読者に最も伝えたかったことが分かった気がしました。

それは、経営者にとって真に悩ましい部分は人間関係だということです。

もちろん、経営者として会社を存続していくうえでは売上を上げ、無駄な費用を減らし、会社の財務状況を健全化することは大切です。

しかし、その財務状況に間接的ではありますが大きく影響を与えているのが社員、つまり人間関係だと思いました。

主人公のタクは会社の成長期で大きな困難に何度もぶつかります。

そして、その困難はいつも人間である社員が大きく関わっていました。

営業要員の同時退職や顧客データの盗難などは会社に大きな負の影響を与えています。そして、その困難を乗り越えるために立ち上がった新たなエースの登場など会社をシステム化するうえでタクは社員に対して良いアプローチをとることができたので会社は成長できたのだと思いました。

 

本書では会社の人間関係を改善するためにグッド・アンド・ニューと承認の輪というゲームを行っています。

私はこの部分を読んでいるとき、当社の朝研で行っている自慢と承認と同じことに気づき、とても驚きました。

同時になぜ自慢と承認を行っているのかという理由を本書で学ぶことができ、朝研の自慢と承認に対するモチベーションが上がりました。

さらに、タクは会社のクレドカードを作って社員にその内容を覚えさせています。それは社内に経営理念を浸透させることであり、会社が個人事業の規模から売上10億を超える規模の会社になるために必要なことでした。

 

私はこのように経営者の苦悩を知ることにより、会社をシステム化するために社員の組織としての力をつける必要性を学びました。

それに加え、本書が14年の年月を超えても必要とされている理由についてもわかった気がします。

それはすなわち、会社経営は社員や家族との人間関係に大きく影響を受けるため、会社経営に携わる人間はその事実を知る必要があるということです。